梅雨に入ったばかりの鹿児島は鬱蒼とした湿気に包まれていた。九州南部が梅雨入りする時期など考えもせず格安航空券をゲットしてしまった我々は、曇り空のち小雨の複雑な天気の中、鹿児島探検を楽しんだ。いつもなら本数の少ない地方交通線とバスを駆使してやり過ごすけれども、今回は運転能力のある相方との旅であったため、車での移動が大半となる。
行く前に宿をきちんと決めるのは久しぶりだと思いつつ、立ち寄るスポットも事前にある程度検討をつけてからスタートした。本当は桜島に行きたかったが、絶景を楽しむ場所であるため超イマイチな天候を鑑み、断念した。桜島は、次回への宿題としよう。
目次
天然の砂むし温泉、体に纏わりつかないさらさらの砂でじっくり蒸されながら錦江湾を眺める
(左)屋根付きの砂むし場、雨でも大丈夫。砂は定期的に消毒されている。(右)埋もれる筆者。/ 砂むし会館 砂楽 / 指宿市湯の浜5-25-18 / 入浴料+浴衣1080円, タオル120円, バスタオル200円 / 8:30~21:00 / 無休 / 駐車場あり /
鹿児島中央から指宿枕崎線で1時間ほどの場所にある指宿温泉。指宿といえば、真っ先に思い浮かぶのが砂むしである。赤黄青白のカラフルなパラソルの下、大勢の人々が砂浜に埋められている不思議な光景を見たことがある人も多いのではなかろうか。
砂むし温泉とは、摺ヶ浜海岸の地下を流れる高温の源泉の熱によって温まった砂に埋もれて体を温めるもの。天然源泉を使って砂を温めているのは「砂楽」と「砂湯里」くらいなので、せっかくならどちらかで砂むしを利用することをおすすめする。
砂の熱い部分は、50℃位らしい。蒸されている間は本当に気持ちが良くて、寝そうになった。砂に埋もれてぼやーっとしていると、普段のせわしなさがアホらしくなってきた。当初、砂に入るのはべたべたして気持ちが悪いのではないかと思っていた部分があったのだが、全く違った。砂は非常にさらさらしており、はたくとすぐに綺麗に落ちる。砂から上がった自分の体に、湯気が立ち上るのが見えた。
(左)薩摩揚(164円)。甘めで上品な味わい。地元でも人気ある老舗薩摩揚屋さん、創業120年。/ 徳永屋本店 / 鹿児島市東千石町4-23 / 8:30~18:30 / 無休 / 駐車場あり /(右)ちょうちょ屋でランチ。だしの効いたあさり汁が美味しい。焼酎が欲しくなってしまった。/ おもてなしちょうちょ屋 ぴらモール店 / 鹿児島市東千石町11-7 吉俣ビル2F / 11:30~23:30 / 不定休 /
指宿に向かう前に鹿児島中央付近で腹ごしらえ。徳永屋本店では種々の薩摩揚が1枚から手軽に購入できる。島津家の十字家紋を象った島津揚(167円)も購入したが、そちらは写真に収め忘れてしまった。
天文通りには、鹿児島の食を楽しめるランチスポットが立ち並ぶ。見かけて入ってみたのは、ちょうちょ屋。鹿児島の海の幸、山の幸を舌ではもちろん、目でも楽しめる昼御前は特に女性に人気。店内はほぼ満席、食事が出てくるまである程度時間がかかったので、急ぎの観光客には向かないが、旅先の食事にこだわりがある人にはおすすめできる。コスパも非常に高い。
天然温泉付きの指宿民宿「たかよし」に宿泊、湿気の多い鹿児島の夜 / 薩摩焼酎を愉しみ翌日に備え早めに就寝
(上)1日目は民宿たかよしに宿泊。旅館の方は非常に人当りがよいので、安心して宿泊できた。渋めの温泉がついているのが高ポイント。/ 民宿たかよし / 素泊まり1室3880円(1人あたり1940円)※季節変動あり / 指宿市湯の浜5丁目1-1 / 駐車場あり /
砂むし会館のすぐ近くにある「民宿たかよし」で1日目の夜を過ごす。普段はゲストハウスで適当に夜を明かすが、今回はきちんと部屋で就寝。館内は清潔で、リフォームされているのか新しい印象だった(お手洗いは若干古いが、清潔にされているので問題なかった)。
特によかったのが、備え付けの温泉。湯が湧き出ており、なんと天然温泉だった。この宿泊料金で温泉も楽しめるのであれば大満足でしかない。隅々まで気配りが行き届いており、かなり快適だった。民宿から徒歩圏内の飲み屋で軽く焼酎を浴びてから寝る。
(上)鯛餃子、春インゲンの天ぷら、刺身盛り合わせ。焼酎がはかどる。おすすめは指宿の地酒「利右衛門」。3杯だけ呑み比べたが、利右衛門の黒が一番キリっとしていて美味しかった。/ 湯豊宿酒屋 た。/ 17:00~0:00 / 指宿市湯の浜2丁目4-16 / 駐車場あり /
指宿の共同浴場で朝風呂を浴び、”鹿児島の引っかけるとこ” 長崎鼻の岩場を探検する
早起きした我々は、指宿の公衆浴場巡りをしてみることにした。「公衆浴場」と言うと、旅慣れしていない人にとっては「綺麗ではない」との印象があるらしく、一緒に行ける人はめったにいないので、ありがたい限りである。「綺麗さに欠ける」のではなく「渋い」のである(重要)。
(左)村之湯温泉。朝の6時から開いているので、朝風呂にぴったり。6:00~24:00 / 入浴料300円 / 駐車場あり /(右)弥次ヶ湯温泉。湯は結構熱め。女湯は水で薄めて良い浴槽と、薄めない浴槽で脱衣所が分かれていた。7:00~21:00 / 入浴料300円 / 駐車場あり /
お昼は道すがらにあった池田湖パラダイスなる圧倒的B級感漂う場所でいただいた。パラダイス丼(1200円)とこれまた謎のネーミングセンスの黒豚丼は美味しかった。若干低血糖気味で乗り物酔いもしていたので、早めの昼食を摂れて助かった。
愛知県の”持つとこ” といえば知多半島だし、鹿児島の”引っかけるとこ” といえば長崎鼻である(主観)。長崎鼻は薩摩半島の最南端、国立公園に指定されていてウミガメの産卵地として有名な地。浦島太郎はここから竜宮城に行ったことになっているらしい(諸説あり)。
開聞岳と白い灯台、そしてゴツゴツの岩場が長崎鼻の特徴。岩場は自由に入れるので、潮が引いているときに散歩してみると楽しい(が疲れる)。すぐそばに龍宮神社があって自由に参拝ができる。貝殻に願い事を書いて縁結びをご祈願する神社。
西南戦争で苛烈な争いが繰り広げられた城山に行く
鹿児島中央方面に戻って来て、今度は街中を探索する。偶然大きな鳥居を見かけたので、行ってみると照国神社というらしい。後に調べてみると島津斉彬が祀られている神社であり、超有名な神社であった。不勉強極まるが、行けたので良しとしよう。
(上)こっそり楽しみにしていた西郷隆盛銅像が見れたので満足。
仙巌園は、島津光久が建てた庭園。 入ってすぐに「反射炉跡」があり、これは大砲を作っていた場所。ビュースポットから見える桜島の景色はもちろん、他にも江南竹林や水力発電ダム跡など、見どころがたくさんある。
(左)錫門。見学ルートの中ほどにある。江戸時代はここが正門だった。(右)桜島と日豊本線の線路。/ 仙巌園 / 入場料1000円 /
(上)白くま(800円)。仙巌園茶房で休憩。
歩き疲れたので、仙巌園の内部にある茶房で一服。店内は外国人に人気だった。鹿児島に来たからには1匹くらい白くまを頂きたいと思っていたのでオーダー。かなりボリューミーだった。2人で1個をシェアするのがちょうど良い。
帰ってから思い出してしまったのだが、鹿児島市内にある「数学カフェ」でもお手頃な白くまが提供されている。数学カフェの存在は以前から知っていて、鹿児島に行く機会があれば立ち寄ってみたいと思っていたのだが、すっかり忘れてしまった。
鹿児島の郷土料理、盛り付けが美しいキビナゴの刺身を酢味噌で頂く
鹿児島の郷土料理は、豊富な海の幸を素材に甘めの味付けがされているものが多い。醤油も甘かったりする。代表的な薩摩料理に「キビナゴの刺身」がある。盛り付けが特徴的で、酢味噌につけて食べるのが一般的。美味しい、芋焼酎と合う。他にはトビウオなんかも有名。
薩摩焼酎を存分に楽しんだ後、ホテルに戻ってきた。2日目はノーマルなビジネスホテルに宿泊。部屋は別々であり、この辺の絶妙な距離感が非常に心地よかった。夜部屋に帰るとなぜか勉強し始め、途中で(何で鹿児島で勉強してるんだろう)と気がついたので、そんなことはさっさと止めて鹿児島の夜道を散歩することにした。
酔い覚まし…と言うほど別に酔ってなかったが、夜風に当たると気持ちよかった。このまま夜も営業している喫茶店に入って珈琲を頂こうと思っていたが、なんと財布をホテルに忘れた。そういうとこだぞ。ポケットにかろうじて入っていた小銭でファミマのコーヒーを買って帰った。
自然に囲まれた霧島神宮と安楽温泉郷で鹿児島旅を〆る
定番の観光スポットである霧島神宮に立ち寄った際、霧島市には温泉郷があることが判明。こぢんまりとした温泉郷で鄙びており、活気がある雰囲気ではないのだが、そののどかさが沁みることもある。安楽温泉郷は平安時代に発見され、鹿児島県内で最古の温泉地。安楽温泉郷には温泉施設が6カ所あり、そのうちのひとつ「鶴の湯」に行ってみた。
(上)鶯色に色づく源泉には少し感動した。湯口には析出物がもりもりに生えており、源泉の良さが分かる。身体はなかなか湯冷めしなかった。/ 鶴乃湯 / 霧島市牧園町宿窪田4199-4 / 入浴料300円 /。
鹿児島空港には足湯があり、出発前の時間調整に丁度良い。また、鹿児島の空港ラウンジに行ってみたところ、薩摩焼酎や日本酒、ワイン等が試飲し放題だった(酔い止め薬を服用していたので呑めなかったのが悔やまれる)。バナナチップスやお菓子類も豊富で、ゆったり過ごせる空間となっていた。
今回の鹿児島旅は車移動ができるおかげで、移動による疲労感がほとんどなかった。当たり前だが、免許があると行動範囲が全然違う(だからといって取るつもりはないのだが…)。あまり体調が優れなかったのが残念だが、非常に充実した3日間を送れた。鹿児島もまた行きたいし、2人旅もいつかまたしたい。
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