ヤシの木ゆれる立春の南国、海岸線を南へ進む宮崎旅にて海景色と郷土料理と地焼酎を堪能する

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バスの窓から、濃い青に染まる爽やかな海が見えた。雲一つなく、晴れているおかげで太陽の光が海面に反射して輝いている。海の近くだからか、少し湿った風が香った。うすら寒い関東と異なり、これが南国かと感心する。

国内線LCCといえば、ジェットスターにお世話になりっぱなしだ。今回もジェットスターのセールに参戦したのが、この宮崎旅のきっかけだ。成田空港から宮崎空港までは約1時間半の直行便。航空券の値段は変動しまくるのが常だけれども、セールではなんと片道1990円のお値打ち価格。美味しそうな宮崎地鶏を想像したら、居てもたってもいられなくなり、気がついたらしっかりと購入していた。

九州の中では、福岡・大分・長崎が観光の帝王として君臨しているため、あまり宮崎旅行のイメージは湧かない。しかし、流行りのエアビーで探せば、宮崎中心部には観光客を想定した物件が多く見つかる。1泊3000~4000円程度で泊まれるため、格安の九州旅行を構成できたわけだ。

宮崎の電車で海岸線をひた走る 南国の景色を楽しむ

ジェットスターの早朝便で午前中に宮崎に到着。ここから飫肥を目指したが、電車を間違え、日豊本線に乗ってしまった。宮崎の電車は難しい。これも旅の経験値だと考えなおし、あらためて日南線に乗る。4時間のロスタイムを経て、目的地に到着した。

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(上)マンゴーソフトクリーム(520円)。宮崎空港ではとろけそうなマンゴースイーツが気軽に食べられる。マンゴーパフェやマンゴージュースもある。

特有の鄙びた空気が流れる 飫肥城下町めぐり

散策の起点となるのは飫肥駅。宮崎から乗り継いで、日南線をのんびり走ること約1時間半の場所にある。飫肥駅では、ひときわおしゃれな駅舎が観光客を迎えてくれる。もうひとつの特徴は、駅前の売店。愛想の良いお母さんが揚げたての美味しいからあげを提供してくれる(200円)。

のどかな風景というよりは、鄙びている感じだ。飫肥にも五万石の歴史があるはずなのだが、地元民にとってはあまり誇りではないのかもしれない。飫肥城といっても天守はなく、その跡地に歴史資料館が建つのみ。かっこいい天守でもあれば、飫肥はもう少し盛り上がったのかもしれない。

 

飫肥といえば、外務大臣だった小村寿太郎の故郷としても有名だ。小村がポーツマス条約を調印していなかったら、いったい日本はその後どうなっていたのだろう。優秀さは財産である。飫肥では、そんな小村寿太郎の生家(復元)や通っていた藩校「振徳堂」、小村寿太郎の偉業が詰め込まれて保存・展示されている「小村記念館」を見学できる。

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飫肥をめぐるには、飫肥名所の共通入館券である610円の通行手形(飫肥城歴史資料館で購入)をフル活用すると良い。1か所200円程なので、4か所以上行く場合お得になる。他に、飫肥の食べ歩き引換券付マップ(700円、1200円)もあるが、そもそも引き換えできる店が少ないのと、記載があるのに実際は引き換えをやっていない店もある等、全体的にあまり協力的ではなかったのでこちらはおすすめしない。

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(上)飫肥名物の厚焼卵は「厚焼処おびの茶屋」で購入できる。炭火で1時間かけてじっくりと手焼きされる。甘みとぷるんとしたなめらかな舌ざわりが病みつきになる、プリンのような厚焼卵。

宮崎路線バスで海景色を堪能 鵜戸と青島の珍しい景観

2日目は青島方面へ行くことにした。山から海へとめぐりゆく景色が特徴で、観光列車(海幸山幸、要特急料金)も走る、水辺好きにはたまらないトロピカルな景勝地だ。

宮崎交通バス1日乗車券(1800円、コンビニのコピー機にて予約不要で購入可)を存分に活用して移動する。宮崎の路線バスは利用客の少なさからか、料金がやたらと高い。日南海岸沿いをひと通りバスで観光する場合は、1日乗車券を使えばかなりお得になる。この日かかったバス代は、計算すると5000円以上。3000円ほど損をせずに済んだ。浮いた分で美味しい宮崎グルメをいただくとしよう。

 

本数は圧倒的に少ないが、窓からうかがえる景色を堪能しながらゆったり進む。時間に追われない、そんなノロマな旅も良い。

最初に向かったのは、断崖絶壁に建つ鵜戸神宮。珍しい地形をしている神社で、洞窟の中に本殿が鎮座する。豊玉姫関連で、特に縁結びのご利益を願って参拝する女性客が多い。すぐそこにしぶきを上げる海模様が楽しめるので、縁結びなんぞに興味がない男子諸君にもおすすめしたい。

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再びバスに乗り、向かったのは海を望む南国公園、サンメッセ日南だ。海を背中にそびえたつ7体のモアイは、インスタグラマーの格好の餌食となっている。本場イースター島から許可を得て再現されたモアイは、全世界でサンメッセ日南のみ。休憩所に流れるインタビュー映像では、制作担当者の「作ったというより、作らされたと言ってもいい…」云々のコメントが残り、摩訶不思議B級スポット感がますます強まる一方だ。

眺めの良いレストランでお昼をして、売店でモアイ商品を見学。

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晴れた空の青色と芝生の緑色が映える綺麗な丘にたたずむ7体のモアイ。右から、学力・金運・結婚・全体・恋愛・健康・仕事運をつかさどる設定になっている。

サンメッセ日南には至るところに謎オブジェがあり、撮影を楽しむ人々であふれていた。天気がよければ、海から吹くあたたかい風を心地よく感じられる。

最後に向かったのは、トローリータクシーが話題の青島。亜熱帯植物に島全体が覆われている、面白い場所である。鬼の洗濯板と呼ばれる自然現象を間近で見られることもあって、宮崎観光の中でも人気のスポット。海の上に敷かれた参道を歩いて参拝する青島神社では、ヤシの木が描かれた可愛らしい南国デザインの御朱印帳(1500円)が頒布されている。

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海岸付近に、でこぼことした不思議な岩床があらわれる。日南海岸沿い広くに渡って大きく作られているため「鬼の洗濯板」といわれている。自由に足を踏み入れることもできるので、洗濯板の上を少し歩いてみた。

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青島へ向かう参道は海の上にある。あたたかい気候も相まって、風情たっぷりであった。

青島参道には大きめのお土産ショップ兼カフェがある。販売されていたチーズまんじゅう(150円)は、程よい甘さが疲れにしみた。南国ムード満点の色鮮やかな植物を堪能できる宮交ボタニックガーデンは、無料で入館できる。参道沿いの海岸にある、最近流行りの黄色いポストも見ておきたいところだ。

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旨味たっぷり地鶏炭火焼と地焼酎で宮崎の夜はふける

たくさん観光した夜はお酒が旨くなる。宮崎の産業では、肉用若鳥の飼育が全国トップクラスでさかん。宮崎地鶏を美味しくいただこうと、橘通りをふらふら歩く。宮崎の夜のお楽しみゾーンをしばらく行くと、予約しておいた「軍鶏隠蔵 本店」があった。

宮崎地鶏、いわゆる「じとっこ」の専門店。郷土料理として有名な炭火焼だけでなく、手羽唐揚げや鳥刺しなど豊富なメニューが楽しめるため、観光客にも地元客にも人気が高い。蔵造りの高級そうな外観に少々たじろぎつつ、ドアを開けると愛想の良い店員さんのあいさつにホっとした。

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注文が入ってから味付けをし、高温の炭火で網焼きされた地鶏炭火焼は絶品だった。鶏の旨味とほんのり香る炭の風味。焼き手の男子店員によって燃え上がる炎の中に放り込まれ豪快に焼かれた地鶏は、その場ですぐ鉄板に盛られて出てくる。合わせて注文した地焼酎が、グイグイと流れていってしまう。

地鶏炭火焼には柚子胡椒をつけて、味の変化を楽しむこともできる。口の中をさっぱりさせるため、付け合わせにきゅうりが出てくるのが特徴。宮崎県は、きゅうりの生産量NO.1でもある。

 

(上段)鳥刺し、つくね。(下段)手羽餃子の揚げ物、地焼酎、サラダ。どれも納得のおいしさだった。

南国のおだやかな雰囲気漂う宮崎タウンを散策

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宴の翌朝は帰りの便を気にして、宮崎空港近くを散策することにした。朝はゆっくり起き、宮崎神宮に足をのばした。宮崎の街中には、見上げるほど高いヤシの木が平然とゆれている。フェニックスという名前で、県の木に指定されている。

歴史的価値が高い宮崎県庁は、一般観光客も無料で入場・見学できる。東国原元知事が活躍していた時代、頻繁にテレビに登場していたあの場所だ。当時は多くの観光客でにぎわっていたそうだが、現在はゆったりと観光することができる。気さくな警備員さんと亜熱帯植物が醸し出す空気には、南国特有のおだやかさがある。

 

お昼は、宮崎グルメをいただく。宮崎県庁近くの「ふるさと料理 杉の子」には、チキン南蛮定食のみならず、他にもバリエーション豊かなメニューが並ぶ。今回はもちろん、チキン南蛮定食を注文。口に入れると、パリっと揚がった鶏肉にしみこむ甘酢がジュワっと広がる。たっぷりつけたタルタルソースとの相性も抜群。

宮崎旅、最後のシメをフルーツパフェにしようと、再び宮崎中心部を移動。青果専門店の「フルーツ大野」が提供するフルーツパフェは、華やかさが群を抜いている。新鮮な宮崎産の果物をたっぷり使った色鮮やかなパフェで、旅のラストにひと押しを加え、宮崎空港へ向かった。

 

(左)チキン南蛮定食。ボリューミーに見えるが、あっという間に平らげてしまう。同じく郷土料理の冷や汁がセットでついてくるのがお得。ただし、冷や汁は好き嫌いが分かれるので注意。

 

(左)日向夏パフェ。甘みとともに程よい酸味があり、さっぱりといただける。中に入っているクリーミーなシャーベットが特に美味しい。(右)南国ならではの不思議なフルーツ。

宮崎では、まったりとした3日間を過ごした。行く場所を減らして、その土地をじっくり味わう旅も良い。観光地としてはあまり目立たない宮崎だが、実際に来てみると楽しみはそこらじゅうにあった。次は高千穂に行こう。定刻通り帰りの飛行機に乗り、帰路についた。

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