街灯の光に白い風が見えた。雪を含んだ風が、照らされた路面に散る。函館の夜は真っ白に覆われて、体の芯まで冷えてしまう。2月上旬、念願の冬の北海道に来たことを実感する。
旅のきっかけはLCCのセール。成田空港から函館空港まで1時間半の直行便といえばバニラエアだ。片道1,480円の争奪戦に勝利し、予約を入れた。函館ベイエリアには、2017年にできたばかりの綺麗なゲストハウス「HakoBA」もあるから、宿の準備も安心。北海道旅すら格安にすませられる現代のテクノロジーには感謝の気持ちでいっぱいだ。
(左)バニラエアおなじみの機内食。クリームパン(350円)。(右)まろやかな抹茶クリームがたっぷり詰まっている。抹茶味は、2月3月限定商品。
目次
函館の夜空に映えるイルミネーション ローカルフード片手に宿へと歩く
雪がちらつく中、函館帝産バスに乗り換えて函館駅に向かう。函館山ロープウェーで夜景を見るつもりが強風の為運休。代わりに八幡坂のイルミネーションを見ようと、夜道を少しだけ歩く。夜の函館は静かで、雪を踏みしめる音が響く。「ハイカラ」と表現されるように、街並みには洒落た建物がそびえ立っており、見るだけで楽しめる。函館ローカルフードを片手に宿へ戻った。
(左)函館市内に複数店舗があるコンビニ、ハセガワストアのやきとり弁当(小/490円)は、函館のソウルフード。タレだけでなく、塩や旨辛味もある。注文が入ってから焼き始める。”やきとり” だけど、豚肉。(右)ラッキーピエロのチャイニーズチキンバーガー(350円)甘辛タレの衣に包まれた唐揚げが旨い。新鮮なパリパリレタスとの相性抜群。
ベイエリアの端にある「THE SHARE HOTELS HakoBA」は、抜群の立地と設備が綺麗に整っているにも関わらず、財布にやさしいことで人気のゲストハウス。函館観光で宿を安く済ませたいならば、HakoBAで決定。
1泊3000円ドミトリーでアメニティが揃っているうえ、共用スペースは至るところがお洒落で気持ちが良い。おまけに直前予約だと1泊2,125円になることもある。店員さんの接客もあたたかく、そのせいか全体的にやわらかいムードが漂っていた。海外旅行を楽しむ外国人観光客が圧倒的に多く、日本人の方が少数派だったかもしれない。
道南の味覚、海の幸を堪能する 函館朝市
2日目は朝8時頃に宿を出て、函館朝市からスタートすることにした。ここには道南の味覚がぎゅっと詰まっている。市場中央にある活イカ釣りは、釣ったイカをその場で刺身にして食べられることで大人気のスポット(1匹1700円)。函館朝市では、鮮度抜群の海鮮丼を堪能したり、海の幸のショッピングが楽しめる。
(上)えきに市場2階、二番館のカニほぐし丼定食(500円)。
(左)函館十字屋珈琲のブレンド(350円)。昭和初期から函館で自家焙煎珈琲豆を作り続けてきた老舗の味でほっと一息つく。(右)函館新聞。旅先でその地域の地方紙を読むのも楽しい。旅のお土産に地方紙を収集するのも良い。
明治初期、箱館激動の舞台 星型城塞「五稜郭」の今を歩く
中世ヨーロッパの築城方法を模倣した星型の城塞は、攻撃しやすく守りやすい構造になっている。土方歳三が散った箱館戦争の舞台、五稜郭を歩いてみた。
函館市電を利用する場合、運転手から購入できる市電1日乗車券(600円)を活用すると良い。1回の乗車でおおよそ200円少々かかるため、3回以上乗る場合にはお得になる。バスも使う場合は、市電バス1日乗車券(1000円)もある。函館駅から出ているバスに乗り、五稜郭公園前にて下車し歩いて向かう。
市電は15分に1本くらいあり、地方の中では本数が多い。時間をあまり気にせずに観光できるので気が楽だが、終電は早めなので夜は注意。
冬の晴れた青空に映える高さ107mの五稜郭タワー。展望台(入場900円)からは、五稜郭の全体像を一望できることで人気。歴史を展示したパネルや復元模型も楽しめる。
五稜郭公園は一般公開されていて、無料で入場可能。桜の季節には丸ごとピンクに染まり、美しい。公園内にある箱館奉行所(入館500円)は、徳川幕府の役所だった建物。詳細な歴史に触れられるおすすめスポット。
新選組の鬼副長、土方歳三ブロンズ像は人気撮影スポット。凛々しい洋装姿がかっこいい。戊辰戦争で活躍し、五稜郭にも出陣したが、新政府軍の弾に敗れる。35歳だった。
(上)五稜郭タワー1階では、北海道の地ビール飲み比べ(2種500円)ができる。爽やかで少し甘みを感じるサッポロクラシックと、麦芽の風味と苦みを楽しめる大沼ビールアルト。
(上)「函館麺厨房 あじさい」の味彩塩拉麺ハーフ(500円)。五稜郭タワーのすぐ近くにあるので、観光後に立ち寄りやすい。中華料理がルーツの函館塩ラーメンは、シンプルな味付けと透き通るスープが美味しい。
古きよき温泉街でレトロを楽しむ 歴史ある湯の川を訪ねて
函館市街地と空港の間に位置する湯の川温泉は、レトロな街並みと豊富な源泉による足湯や銭湯が人気で、侘び寂びのある温泉街だ。市電・湯の川駅前の湯川源泉を使った足湯には、誰でも無料で入れる。
温泉街には、古くから大切にされてきた銭湯が散見される。中でも戦前から営業しており、歴史ある「大盛湯」は、地元の人でにぎわっていた(入浴440円)。高温の源泉を使っているが、水で薄める用の浴槽が別に用意されているため、熱い湯が苦手な人でも安心。冷え切った身体に温泉が染みた。
湯の川は1時間半ほどで湯めぐり散歩を楽しめる。大盛湯で湯川源泉を楽しんだ後は、名物コーヒールームきくちのモカソフト(310円)を食べる。シャリシャリとした食感が美味しく、珈琲の香りが鼻に抜ける。きくちの店内には、その他にもモカケーキセットやパフェ、軽食類もあるので、一服していくのが良い。
湯の川温泉発祥の地として、湯の守り神と親しまれる湯倉神社を訪ねる。高台にある鳥居が遠くから見えた。室町時代に、病気の木こりが湯に浸かって療養したお礼に薬師如来を祀ったことが湯倉神社の由来とされる。
(左)湯倉神社の御朱印帳(1500円/朱印代別途300円)。北海道の神社名簿と水引の留め具が一緒にもらえる。御朱印をもらうと、栞がついてくる。(右)なでうさぎ。神話・因幡の白うさぎにちなんでいる。
美味しい函館が空港に 荒れる雪模様で飛行機欠航
湯の川から函館帝産バスに乗って、空港に戻る。不安定な天候の中、帰りの便を待つ。どうやら欠航しそうな雰囲気が出てきたが、静かに待っていよう。
函館空港2階には、北海道の名産品が豊富に取り揃えられている。あれこれ見ているだけでも時間は過ぎる。函館牛乳を片手に、ゆっくりと旅行雑誌を読みふけった。
予定より3時間近く待たされ、結局欠航が決定した(乗員繰り)。荒ぶる人々を遠目に、スマホで翌日便に振り替え、「HakoBA」を再び予約(直前予約で1泊2125円)。手続きは簡単で便利、旅人にやさしい世の中になったものだ。売店で半額になっていた北海道空弁で腹ごしらえをしてから、見知った宿へ戻った。
(上)北の海鮮鮨(1,290円/半額645円で購入)。うに・かに・いくらの三色丼で、北海道の中では不動のロングセラー空弁。
(左)軽い飲み口の函館牛乳。函館牛乳で作られたバター飴が、ラウンジ受付で無料配付されている。(右)網走ビールの流氷ドラフト(360円)。流氷をイメージした青い発泡酒は、ちょっとしたお土産に。甘みを少し感じる味わいだった。
港に並ぶ赤レンガ 金森倉庫でショッピングとランチ
函館旅3日目は、雪で靴が無残に崩壊してしまった為、金森赤レンガ倉庫で雪靴購入からスタート。雑貨や服飾のみならず、お酒等のお土産、飲食店が勢ぞろいしているので、ショッピングとランチにぴったりなスポット。ランチには、羊羊亭のジンギスカン定食をいただく。食欲をそそる焼野菜とジューシーな羊肉を、ビールとともに満喫した。
(上)羊羊亭のジンギスカンランチ(1490円)。ラム・野菜・ご飯・ドリンクがセットになっている。目の前でジュージューと音を立てる羊肉に、食欲を掻き立てられる。焼きたてのジンギスカンでご飯もすすむ。タレは2種類用意されており、どちらの味も楽しめる。しかもドリンクもついてくる。これで1490円はかなりお得。
文化と伝統が息づく函館の街 ゆかりの文人とメルヘンな洋館、北方民族の美学にふれる町歩き
函館山ロープウェーで空中散歩(往復1280円)を楽しみ、白銀の景色を堪能。煌めくドラマチックな夜景を見たかったところだが、時間の関係で諦める。
函館には文学館や資料館などが点在していて、歴史や文化に触れながら町歩きができる。旧函館区公会堂が工事中で休館中なので、3館共通入場券(720円)を購入し、函館市文学館・北方民族資料館・旧イギリス領事館をめぐる。
(上)3館券(720円)は各施設の受付で購入できる。2館券(500円)/1館券(300円)もある。旧函館区公会堂は休館中で、しばらく見学ができない状態なので注意。
函館ゆかりの人物といえば、石川啄木。文学館2階には、啄木の直筆原稿(複写)が多数展示されている。当時はもちろん手書きで、特徴的な可愛い文字が印象的。あれだけの文人も、これだけ膨大な量の文章を書いてきたのかと思い知らされる。しかも亡くなった26歳までの間に、この量。
きっと啄木は、”効率的にすごい作品を作れるようになろう” などとは一切考えずに、ただただ目の前の紙と筆にひたすら向き合ってきたのだろう。早く確実に効率的に…をひたすら求めがちな現代人にとって、学びは多いかもしれない。
(上)北方民族資料館には、アイヌ民族の生活用具や装飾品などの衣装、武器が展示されている。アイヌ文化の現存資料は少なく、世界的にも貴重で価値が高い。特徴的な色使いや模様には、災難から身を守る魔除けの意味が込められている。
至る所に歴史と文化、伝統が息づく函館。すっかり虜になってしまった。食のレベルも高く、思う存分満喫した3日間となった。今度こそ帰りの便に乗って、東京へ向かった。
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